看護師の日常 ~認知症のSさん~
今回は、「看護師の日常 ~認知症のSさん~」について紹介します。
日本人の平均寿命は年々伸びており、日本は世界的にみても、長寿国です。
寿命が延びるということは、体と同じように頭も衰えていき、認知症の方が増加するということです。
私は、総合病院の外科病棟で働く看護師です。
以前、入院していた80代後半の男性、Sさんのお話について今回は紹介いたします。
看護師の日常 ~認知症のSさん~ 「愛されキャラ」
Sさんは、大腸の手術のために入院となりました。
陽気で明るく、スタッフを見つけるといつも、
「おはよう。今日も忙しそうだな。」
などと大きな声で挨拶をしてくれます。
80歳代後半ということもあり、認知症を発症しており、今回手術で入院したこともわからず、いつも病衣から私服に着替えをして帰る準備をしていました。
それだけならまだいいのですが、術直後は点滴や鼻に管が入っており、それを自分で引き抜いてしまい、まるで”殺人現場”のように血だらけになっていたこともありました。
本人は自覚がないので
「あー、鼻血が出たんだね。はっは。」
と笑っていました。
あー、また抜いちゃったのね。血だらけになって・・・。
と呆れてしまいますが、Sさんの笑顔を見ると何だか憎めず、愛されキャラのSさんです。
その後、特に病状は問題なかったのでよかったのですが、時には認知症の患者さんがこうして術後お腹に入っている重要な管を抜いたりすることもあるので要注意です。
Sさんはおしゃれなハットをかぶり、1日に何度も、
「畑を見に行かないといけないから行きますね。」
などと話し、離院してしまうリスクがあったのでセンサーマットといってマットを踏むとNsコールが鳴り、駆け付けることができるようにしていました。
看護師が

今はまだ治療が必要なので今日は泊まっていってください。
ここはSさんのベッドなので大丈夫ですよ。
と説明すると、帰れないことは理解している様子でした。
そんな毎日を送るSさん。
入院中に驚かされることもたくさんありました。
看護師の日常 ~認知症のSさん~ 「行方不明」
Sさんの部屋は、何かあったときにすぐに気づけるようにNsステーションから1番近い大部屋でした。
日中はNsステーションにいる看護師が出入りする際にちらっと佐藤さんの部屋を見ることができ、目の届くところにいるので特に問題もなかったのですが、夜勤中はスタッフの人数が減ってしまいます。
そんな夜勤中に事件は起きました。
それぞれのスタッフが巡回や処置などで少しの間、Nsステーションに誰もいない時間があり、戻って部屋を確認するとSさんの姿がありません。
普段はセンサーマットをきちんと踏んで出てきていたのですが、その時はたまたまマットをまたいでしまったようです。
すぐにスタッフみんなでSさんを捜索することになりました。
トイレやディルームにもいなく、歩いている姿もありません。
歩行には問題はなかったのでもしかしたらエレベーターに乗って別の階に行ってしまったのでは、と心配になり、他の階も探しました。
隣の病棟の看護師に確認してもそちらにはいないため、困り果てていました。
しばらく探していましたが、なんとSさんは意外なところで発見されました。
Sさんは別の病室の空きベッドで寝ていたのです。
そこには別の患者さんも数名寝ており、たまたま空いていたベッドで静かにSさんは寝ていました。
一見すぐに見つかりそうですが、あまりにも自然に寝ていたので逆に気づかなかったのです。笑
Sさんを起こし、自分の部屋に戻るように伝えますが、Sさんは
「おー、どうしたんだ。驚いた顔して!まだ夜だから寝なさい。隣空いてるから。」
と、隣のベッドで休むように促されます。
いつものように斜め上を行く返答に笑ってしまいました。
きっとSさんからしたら私たちのような年代は孫のような存在なんだと思います。
本当に自由で優しいSさん。
事情をもう一度説明すると部屋を間違えていたことに気づき、
「はっは。そうか。ごめんな。」
といつものように明るい笑顔を見せてくれます。
その笑顔を見ると、なんだかこっちも笑顔になり、本当に愛されキャラのSさんです。
Sさんは、世話好きな性格で時には同室の一人で食事をとれない患者さんの食事介助をしていたこともありました。
その光景には、ほっこりし、何だか温かい気持ちになりました。
そんなSさんは、その後元気に回復し、退院していきました。
まとめ:看護師の日常 ~認知症のSさん~
今回は、認知症の患者さんの事例を紹介しました。
認知症の患者さんは、新しいことを覚えたりすることが難しいため、入院などの環境の変化に適応することができずに部屋を間違えたり、迷ったりする方が多いです。
しかし、今までの人生経験などの昔の記憶は覚えていることが多いです。
中には食事や着替えの仕方を忘れてしまったとしても、奥さんのことだけは覚えている人もいます。
やはり、大切な人の存在は忘れないんですね。
多忙な毎日だと、病気や認知症の症状だけを見てしまうことも多いですが、患者さん自身に焦点を合わせて見てみると、ひとりひとりの生活背景や性格なども見えてきます。
患者さんとしっかりと向き合っていかねばと思います。
次回もお楽しみに♪
最後までご愛読ありがとうございました^^
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